AMER SPORTS JAPAN, INC.

アメアスポーツジャパン

SEAN HILLIER

ショーン・ヒリアーさん

代表取締役社長

世界有数のグローバルブランド「サロモン」「ウイルソン」「アークテリクス」「アトミック」をはじめ、数々のスポーツブランドを傘下にもつ世界最大のスポーツ用品グループ、アメアスポーツ。先端技術の粋を極め業界のトップメーカーとして革新を続ける同社が、日本の事業を強化する。成長するアウトドアと各種スポーツ市場の展望と魅力を、アメアスポーツジャパンの代表取締役社長 ショーン・ヒリアーさんに聞きました。

“新しい時代のスポーツ”を実現したい

 

―世界中で健康的な生活への要望が高まっています。

 

アメアスポーツジャパンはオールシーズンに対応する革新的で高品質なスポーツポートフォリオで多くのスポーツ愛好者やトップアスリートの皆さんに支持をいただいています。「サロモン」「ウイルソン」「アークテリクス」「アトミック」「アルマダ」という世界的な人気を誇るスポーツブランドたちは、コロナ禍の中でも着実な成長を実現しています。この2年間の大きな変化といえば、日本を含め世界中の人々が活動的で健康的な生活を重視するようになったことです。

アクティブなライフスタイルを志向する人々が増えたことは、スポーツやアウトドアの市場にとって、とても大きなチャンスとなっています。コロナ禍の中で経営としてはスタッフとエンドユーザー(最終消費者)の安心と安全を最優先に、店舗をお休みしたりオフィスの勤務形態を変えたりしましたが、おかげ様で昨年は会社全体で成長することができました。中でも革新的なアウトドアウエアを手掛ける「アークテリクス」は前年比25%の成長を実現しています。これは多くの方が日々の生活の中で、スポーツや自然に触れる機会を増やし、健康的な生活をした表れです。

私たちの目標は、エンドユーザーにエンジョイを提供することであり、「今よりもっと楽しく生活をしてもらう」ことです。単に商品を売るのではなく、人生を楽しみ、健康で活動的なライフスタイルを提案することで、スポーツ産業をもっと魅力的で社会にとって重要な存在にすることが可能です。私たちは各ブランドのパートナーや取引先、ユーザーの皆さんと“新しい時代のスポーツのあり方”を実現したいと考えています。

 

 

―スポーツ産業の魅力とは何でしょうか。

 

スポーツとアウトドア産業の魅力は何と言っても、人々の人生を豊かにし、幸せにできることです。競技で競い合い、目標を達成することも、大自然の中で自らに挑戦をすることも、スポーツは私たちに体験させてくれます。年齢や性別、世代を問わずエンドユーザーがもっと楽しくスポーツができるように、当社はコミュニケーションを充実させます。前季、スノースポーツは降雪量も豊富で数年ぶりに非常に元気な市場になりました。私も安比高原や野沢温泉、富士見パノラマ、白馬、ルスツ、富良野、ニセコに伺いましたが、それぞれ充実のシーズンでした。私たちとしては、次はリゾートの夏のアクティビティに力を入れるつもりです。今年か来年には間違いなく実現します。それもすべてはエンドユーザーが生活を楽しむためで、スポーツを盛り上げるために、やりたいことがいっぱいあります。

“世界最高のスポーツ用品カンパニー”へ

 

―アメアスポーツの新たなプロジェクトは?

 

アメアスポーツの使命は、“ナンバーワン・プレミアム・スポーティンググッズカンパニー”になることです。今年はブランドポートフォリオにおいて1月に腕時計の「スント」を売却した一方、8月に北欧スウェーデンのスポーツファッションブランド「ピークパフォーマンス」がグループに仲間入りします。日本でも知られたブランドですので、大切にその魅力をより多くの方に伝えるべく取り組みます。

今年は“ブランド”と“人”に投資をし、全6ブランドでコミュニティとの結びつきを強めます。「ウイルソン」ならばテニスや野球、「サロモン」「アークテリクス」であればクライミングやトレイルランニング、「アトミック」ならスキーやスノーボードに携わる人々と一緒に、その分野を盛り上げていきたいと考えています。

リアルな店舗は革新的なコンセプトやブランドメッセージを発信する拠点と位置づけ、専門性と経験をもった人々とともに業界の活性化に挑戦します。BtoBであればパートナー店舗でのショップインショップなどを充実し、代理店や小売店の皆さんとお客様のニーズに応えていきます。コロナ禍の中でも、おかげ様で取引先の店舗数はほぼ変わっていません。それぞれの企業と長く一緒に商売をしたいと思っているので、良い時もあれば悪い時もあります。販売先を広げるよりも現在のパートナーシップに対して1店舗ごとの収益性を高め、競技やライフスタイル、ファッションなど領域を超えて、売り場や取引先とより良い成果を追求したい。そのためにお互いを尊重し、“お互い様の精神”で、ブランドに関わる多く人々が目指す姿を実現できるよう応援したいと考えています。

 

 

文化を育て、人々の生活を楽しく豊かに

 

―ブランドごとの成長エンジンは?

 

「サロモン」はスノースポーツとトレイルランニングで更なる成長を目指します。日本で初開催されるトレイルランニングの「ゴールデントレイル・ナショナルシリーズ」をスポンサーし、ランナー・トレイルランナーへのブランド訴求を強化します。高機能な新作のランニングシューズも登場するので、専門性を強みに市場開拓に取り組みます。「サロモン」は世界的なウエアの開発拠点が中国・上海になりましたから、日本でもバーサタイル(多用途)に支持される製品が登場するでしょう。

「アークテリクス」では先日、二子玉川ライズ S.C.に首都圏最大規模の直営店をオープンしましたが、地元のお客様からとても多くの支持をいただいています。9月には京都への新規出店と、原宿での旗艦店リニューアルと新店の同時オープンを予定し、10月には東京・丸の内に大型の新店舗を開きます。丸の内店にはリペア(修理)の「REBIRDTMサービスセンター」を設け、最高品質な製品を長く愛用できるサステイナビリティ(持続可能性)を提案し、アウトドアを愛する人々のコミュニティを創ります。「アークテリクス」では欧米中国と同様に日本でもプレミアムなポジションを確立していきたいと思います。

「ウイルソン」は日本で初のカスタムラケットのプログラムを開始し、9月には錦織圭選手が使用する「ULTRA」(ウルトラ)の新作をローンチします。これは本当に格好いいですよ。ウイルソンは昨年世界規模で初めて売上高1000億円を超え、テニス、野球、ゴルフのギア(用具)で急成長を遂げています。国内のテニス人口は増えていないかもしれませんが、プレー頻度は高まっているのではないでしょうか。私の義母も85歳ですが週2回のプレーをしています。年齢を問わず楽しめる点がテニスの特に良いところです。グローバルで展開しているウイルソンの商品は将来日本でも展開できるかもしれません。

 

 

―アメアスポーツの今後の展望は。

 

売り場や接客においても重要なのは、そこに来店されるお客様やスタッフがハッピーであるかどうかです。今の時代はデジタルはもちろん、店舗にもブランドマーケティングにもお金をかけないといけない時代です。沢山の物がほしいのではなく、良い物が欲しい。1枚のジャケットで色々なアクティビティで使用できるものが欲しい。買い物に行く売り場にも、商品だけでなく、コミュニティ、サービス、ECとの相互性もないと、二回目の来店がない。だからこそブランドのために力を注ぐ人が大切です。人々の暮らしが変わり、変化のスピードはさらに速度をあげていますが、常にオープンマインドで、イノベーション(革新)を実現することで道は拓けます。エンドユーザーには外に出て楽しく生活し、スポーツを楽しんでほしい。そのためにアメアスポーツは良い商品を作りますので、一緒にブランドと文化を育てていっていただきたい。私たちアメアスポーツはファンや取引先、コミュニティの皆さんとスポーツ市場活性化に挑戦していきたいと考えています。

Sean Hiller ショーン・ヒリアーさん

 

1970年 米国シカゴ生まれ、2歳からシアトルで暮らす。

学生時代はテニス競技で活躍し、高校生時代にテニスコーチとして初来日。その後、大学で国際経済などを専攻し、島根大学に留学。日本とアジア地域のスポーツ・アウトドア用品企業でキャリアを重ね、アメアスポーツ、VFコーポレーション、デッカーズ、ペントランド、クラークスなどで代表など要職を歴任。2021年8月にアメアスポーツの日本法人アメアスポーツジャパンの代表取締役社長に就任。大学生の息子と娘をもつ、家族と自然を愛するスポーツマン。